有給は年に何日? 付与要件や期限や繰り越せる日数について解説

2024年04月22日
  • 労働問題
  • 有給
  • 年に何日
有給は年に何日? 付与要件や期限や繰り越せる日数について解説

2021令和3年度に東京都内の労働基準監督署が監督指導を行った3458事業場のうち、違法な時間外労働があったものは1325事業場でした。

企業は、6か月以上継続して勤務している労働者に対して年次有給休暇を付与しなければいけません。また、フルタイム労働者(正社員)だけでなく、パートやアルバイトで働いている労働者にも有給休暇を付与すべき場合があります。労働基準法のルールをふまえて、正しく有給休暇を付与しましょう。

本コラムでは、年次有給休暇の日数や労働基準法におけるルールについて、ベリーベスト法律事務所 練馬オフィスの弁護士が解説します。

1、有給休暇は年に何日付与すればよいのか?

年次有給休暇とは、賃金が発生する労働者の休暇です。
年次有給休暇を付与すべき日数は、労働基準法によって定められています。
また、フルタイム労働者(正社員)だけでなく、パートタイムで働いている労働者にも、勤務日数に応じて年次有給休暇を付与する必要があります。

以下では、労働者に付与しなければいけない有給休暇の日数について、概要を解説します。

  1. (1)有給休暇を付与する労働者の要件

    年次有給休暇は、以下の二つの要件を満たす労働者に対して付与されます。

    • ① 6か月以上継続勤務したこと
    • ② 基準期間における全労働日の8割以上出勤したこと


    年次有給休暇の基準期間は、1回目は雇い入れから6か月間、それ以降は付与日直前の1年間です。
    したがって、雇い入れから6か月が経過した時点で最初の年次有給休暇が付与され、その後は1年ごとに年次有給休暇が付与されます

    なお、上記の規定よりも前倒しで年次有給休暇を付与することもできます。
    その場合は、後述する年次有給休暇の時季指定義務により、特例的なルールが適用される点に注意してください(労働基準法第39条第7項、労働基準法施行規則第24条の5)。

  2. (2)フルタイム労働者の有給休暇の日数

    以下のいずれかに該当する労働者(=フルタイム労働者)に対しては、下表に従った日数の年次有給休暇を付与しなければいけません(労働基準法第39条第2項)。

    • ① 1週間の所定労働日数が5日以上
    • ② 1年間の所定労働日数が217日以上
    • ③ 1週間の所定労働時間が30時間以上


    継続勤務期間 付与すべき有給休暇の日数
    6か月 10日
    1年6か月 11日
    2年6か月 12日
    3年6か月 14日
    4年6か月 16日
    5年6か月 18日
    6年6か月以上 20日
  3. (3)パートタイム労働者の有給休暇の日数

    以下の要件をすべて満たす労働者(=パートタイム労働者)に対しては、1週間または1年間の所定労働日数を基準に、二つの表に従った日数のうち多い方の日数の年次有給休暇を付与しなければいけません(労働基準法第39条第3項)。

    <1週間の所定労働日数を基準とした年次有給休暇の日数>
    1週間の所定労働日数 4日 3日 2日 1日
    継続勤務期間 6か月 7日 5日 3日 1日
    1年6か月 8日 6日 4日 2日
    2年6か月 9日 6日 4日 2日
    3年6か月 10日 8日 5日 2日
    4年6か月 12日 9日 6日 3日
    5年6か月 13日 10日 6日 3日
    6年6か月以上 15日 11日 7日 3日

    <1年間の所定労働日数を基準とした年次有給休暇の日数>
    1年間の所定労働日数 169日以上216日以下 121日以上168日以下 73日以上120日以下 48日以上72日以下
    継続勤務期間 6か月 7日 5日 3日 1日
    1年6か月 8日 6日 4日 2日
    2年6か月 9日 6日 4日 2日
    3年6か月 10日 8日 5日 2日
    4年6か月 12日 9日 6日 3日
    5年6か月 13日 10日 6日 3日
    6年6か月以上 15日 11日 7日 3日

    (例)
    1週間の所定労働日数が4日、1年間の所定労働日数が168日、継続勤務期間が3年6か月の場合

    1週間の所定労働日数を基準とした年次有給休暇の日数:10日
    1年間の所定労働日数を基準とした年次有給休暇の日数:8日

    →年次有給休暇の日数は10日

2、有給休暇の取得期限と繰り越し・時季変更権・時季指定義務

年次有給休暇については、労働基準法によってさまざまなルールが定められています。
以下では、有給休暇に関する法律上のルールのなかでも、とくに重要なポイントを解説します。

  1. (1)有給休暇の取得期限と繰り越し

    年次有給休暇の取得期限は、権利が発生した日(基準日)から2年とされています(労働基準法第115条)。
    したがって、いわゆる年次有給休暇の「繰り越し」が認められるのは一回だけです

    (例)
    2023年8月1日 年次有給休暇(12日)の権利が発生
    2023年8月1日~2024年7月31日 6日間の年次有給休暇を取得(6日間は繰り越し)
    2024年8月1日 年次有給休暇(14日)の権利が発生
    2024年8月1日~2025年7月31日 2023年8月1日に付与されたもののうち、5日間の年次有給休暇を取得
    →残り1日の年次有給休暇は消滅

    2024年8月1日に付与された年次有給休暇はすべて繰り越し(2026年7月31日まで)

    なお、上記の例のように、前の基準期間から年次有給休暇を繰り越した場合には繰り越し分から先に年次有給休暇が消化されます。

  2. (2)有給休暇の時季変更権

    年次有給休暇は、労働者が自由に取得できることが原則です(労働基準法第39条第5項本文)。
    したがって、基本的には、使用者が労働者の有給休暇取得申請を拒否したり、一方的に取得時季を変えたりすることはできません

    ただし、労働者から請求された時季に有給休暇を与えることが、事業の正常な運営を妨げる場合は、例外的に他の時季に有給休暇を与えることが認められています(=時季変更権。同項但し書き)。

    使用者に時季変更権が認められるかどうかは、請求がなされたタイミングや、労働者が指定した取得時期における業務状況などを総合的に考慮して判断されます。
    たとえば以下のよう場合には、年次有給休暇の時季変更権が認められる可能性が高いといえます。

    • 労働者が直前になって年次有給休暇の取得を申請し、その時季において代替人員の確保が困難である場合
    • 同じ時季に複数の労働者が年次有給休暇の取得を申請し、そのすべてを認めると人員が著しく不足する場合
    • 年次有給休暇の取得を申請した労働者が、申請に係る時季において見込まれる業務に必要不可欠である場合
    • 労働者が事前に調整を行うことなく、長期間にわたる年次有給休暇の取得を申請した場合
  3. (3)有給休暇の時季指定義務

    使用者は、10日以上の年次有給休暇が付与される労働者に対して、そのうち5日間を付与日から1年以内に時期を定めて与える必要があります(労働基準法第39条第7項)。

    使用者による年次有給休暇の時季指定義務は、2019年4月から導入されました。
    労働者が遠慮して年次有給休暇の取得申請を差し控えるケースが多いことをふまえて、一定日数の年次有給休暇を確実に取得させることが、導入の目的です。

    使用者は、時期を定めて年次有給休暇を与える旨を対象労働者に説明したうえで、その時季について対象労働者の意見を聞かなければなりません(労働基準法施行規則24条の6第1項)。
    また、使用者は、対象労働者から聞いた意見を尊重するように努める義務を負います(同条第2項)。
    ただし、これはあくまで努力義務にとどまるため、必ずしも対象労働者の意見に従う義務はありません

3、有給休暇を付与する義務に違反した場合の罰則

労働者に対して年次有給休暇を付与する義務等に違反した場合、使用者は以下の罰則の対象となります。

年次有給休暇を付与する義務に違反した場合 6か月以下の懲役または30万円以下の罰金(労働基準法第119条第1号)
時期を定めて年5日の年次有給休暇を与える義務に違反した場合 30万円以下の罰金(同法第120条第1号)

また、違反者が事業主のために行為した代理人・使用人その他の従業者である場合は、事業主にも「30万円以下の罰金」が科されます(同法第121条第1項)。

4、労働者を雇用する際に準備すべきもの

使用者が労働者を雇用する際には、主に以下のような書類の準備および手続きを行う必要があります。

<作成すべき主な書類>
  • 雇用契約書
  • 労働条件通知書(雇用契約書と兼ねることも可)
  • 扶養控除等申告書(労働者が作成、提出)
  • 就業規則(常時10人以上の労働者を雇用する事業場では必須)

<保険関係の手続き>
  • 社会保険の加入手続き
  • 雇用保険の加入手続き
  • 労災保険の加入手続き

<税金関係の手続き>
  • 源泉所得税の徴収
  • 住民税の特別徴収


上記のように、労働者を雇用した際に必要となる書類や手続きは多岐にわたります。
もし労働者の雇用に関する書類の準備や手続きに不安がある場合には、法律の専門家である弁護士に相談することを検討してください

5、まとめ

有給休暇付与日数については、労働基準法でルールが定められています。

また、正社員だけでなく、パートやアルバイトに対しても有給休暇を付与すべき場合があります。
そのほか、有給休暇についてはさまざまなルールが定められているため、不安がある場合には弁護士に相談することをおすすめします。

ベリーベスト法律事務所は、人事・労務管理に関する企業からのご相談を承っております。年次有給休暇の取り扱いに加えて、労働時間の管理・残業代の支払い・懲戒処分など、幅広い事柄についてアドバイスが可能です。
企業の経営者や担当者で、労働者を雇用するにあたって不安がある方や、あらかじめ疑問点を解消しておきたいと望まれる方は、まずはベリーベスト法律事務所にご連絡ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています