愛着障害で離婚の危機|考えるべきことや注意点を弁護士が解説
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練馬区における令和4年の離婚件数は949件でした。前年よりはやや減少したものの、東京都の市区町村の中では、第5位という多さになっています。
夫婦が離婚に至る理由や原因はさまざまですが、パートナーに「愛着障害」の症状がある場合、それを理由に離婚することはできるのでしょうか。
この記事では、愛着障害とはどのような障害で、その原因はどのようなものなのか、さらに、愛着障害を理由に離婚することができるのか、その方法などについて、ベリーベスト法律事務所 練馬オフィスの弁護士がわかりやすく解説していきます。
1、大人の愛着障害とは? 愛着障害を招く原因や特徴
そもそも愛着障害とはどのようなものなのでしょうか。愛着障害の概要や、その特徴、愛着障害を招く原因などについて解説していきます。
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(1)愛着障害とは?
愛着障害とは、何らかの原因で養育者・保護者との愛着が形成されず、その人の情緒や対人関係に問題が生じる状態のことを指します。
そもそも「愛着」とは、乳幼児期の子どもと養育者(主に母親)との間で作り上げられる、「心理的な結びつき」のことです。この心理的結びつきを“アタッチメント”ということもあります。
子どもが成長していくためには、愛着の形成が非常に重要です。子どもが他人に信頼感を持つ、自分の要求を相手に伝える、相手の要求を受け入れるといったコミュニケーション能力を向上させるために、愛着の形成が非常に重要な役割を果たすからです。 -
(2)愛着障害の特徴とは?
愛着障害には、「反応性アタッチメント(反応性愛着障害)」と「脱抑制型愛着障害」の2種類に分かれます。
「反応性アタッチメント(反応性愛着障害)」の症状には、以下のような特徴があります。- 他人に無関心であったり、他人を必要以上に警戒しすぎたりして対人交流を避ける
- 喜びや悲しみの表現が少なく、他者からの声かけに対しても無反応
- 新しい環境に適応するのが難しく適応能力が低い
これに対して、「脱抑制型愛着障害」の症状には、以下のような特徴があります。
- 知らない人に対しても必要以上になれなれしい態度をとる
- 他人に配慮がなく自分の欲求の実現が最優先であるため、過剰に自分勝手な行動をとる
- 他人に対して暴力的な行動をとったり、物を投げつけたりする傾向がある
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(3)愛着障害を招く原因とは?
愛着障害を招く原因として、乳児期に周囲の大人への愛着が適切に形成されなかったことが関係しています。
愛情が十分に形成されない原因として、以下のような事情が考えられます。- 親との死別や離別により愛着の対象者がいなくなってしまった
- 親が子どもに対して最低限の世話しかせず、無関心・放任(ネグレクト)された
- 親が再婚を繰り返し、世話をしてくれる大人が頻繁に変わっていた
- 兄弟姉妹の間で親から受けられる愛情に差があった
- 親から虐待を受けていた
幼少期に、養育者から虐待やネグレクト(育児放棄)などの不適切な養育環境で育った子どもは、愛情障害を発症するリスクが高くなります。
また、子どもが幼い頃に両親が離婚したり、親権者が再婚したりすると、環境の変化が子どもの精神に大きな負担がかかる可能性があるため、愛着障害を招く原因となります。
愛着障害は上記のような要因が複合的に作用することで発症することになり、実際に複数の原因が相互に絡み合っているケースが多いため、特定の原因を把握するのは容易ではありません。
2、愛着障害を理由に離婚することはできるのか
それでは、愛着障害を理由として夫婦は離婚をすることができるのでしょうか。
ここでは、愛着障害を理由として離婚ができる場合や、このような離婚の場合に注意すべき点について解説していきます。
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(1)双方の同意に基づき離婚することができる
民法には、「夫婦は、その協議で、離婚をすることができる」と規定されています(民法第763条)。したがって、愛着障害が理由であっても、夫婦が互いに同意すれば離婚することができます。
このように夫婦が話し合って離婚する方法のことを「協議離婚」といい、現在、多くの夫婦がこの方法を選択しています。協議離婚は、脅迫や強制がないことが前提です。
互いの意志により協議離婚の合意に至ったら、夫婦と成年の証人2名以上が署名した離婚届を管轄の市区町村に提出し、離婚手続きが完了します。 -
(2)離婚する前の注意点
離婚する前に注意したいのが、以下のような金銭に関わる取り決めです。
- 婚姻費用
- 養育費
- 財産分与
- 年金分割
離婚が成立すると婚姻費用の分担を相手方配偶者に請求することはできません。そのため、別居していて、相手に扶養義務があるにもかかわらず生活費をもらえていなかった場合は、離婚が成立する前に「婚姻費用の請求」をしておきましょう。
また、子どもがいる場合は「養育費」の取り決めを行っておくことも重要です。養育費は子どもの健全な成長を支えるために不可欠です。金額や支払い方法は事前に明確にし、支払いが滞るリスクに備えて強制執行認諾文言を記載した公正証書を作成しておくとよいでしょう。
さらに、「財産分与」「年金分割」の手続きは離婚から2年以内に行わなければならない点に注意しましょう。
その他にも、慰謝料や面会交流などの取り決めをせず離婚届を提出してしまうと、不利益を負う可能性があるため、不安があればまずは弁護士に相談することをおすすめします。 -
(3)協議離婚ができない場合には、調停離婚
夫婦の話し合いだけでは協議離婚ができないという場合には、家庭裁判所を利用する調停離婚を行うことになります。
調停離婚は、家庭裁判所の調停委員会が当事者の間に入って、離婚の合意の道を探ることになります。調停委員会は、家庭裁判所の裁判官1名と専門的な知識・経験を有する一般市民の中から選ばれた調停委員2名により構成されています。
当事者は、調停委員に対して、ご自身の主張や意向を伝え、調停委員を介して相手方と話し合うことになるため、感情的にならず客観的に手続きを進めることが期待できます。
調停が不成立になった場合、下記裁判離婚を検討することになります。
3、裁判離婚になったときに求められる「法定離婚事由」とは
愛着障害を理由に相手との離婚を希望するのは自由です。
しかし、相手との話し合いによる離婚が難しい場合には、裁判所に訴訟を提起して「裁判上の離婚」を進めていく必要があります(裁判離婚)。
裁判離婚をする場合に、離婚できる理由は、民法に規定されている5つの事由に限定されています(民法第770条1項参照)。
- ① 配偶者に不貞な行為があったとき(1号)
- ② 配偶者から悪意で遺棄されたとき(2号)
- ③ 配偶者の生死が3年以上明らかでないとき(3号)
- ④ 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき(4号)
- ⑤ その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき(5号)
愛着障害を理由とする離婚の場合には、「⑤その他婚姻を継続し難い重大な事由」にあたるか否かがポイントとなります。愛着障害を原因として夫婦関係が実質的に破綻したと判断できるケースでは、裁判離婚が認められることになります。
お問い合わせください。
4、愛着障害を理由に離婚するときに弁護士に相談するメリット
愛着障害による離婚を弁護士に相談する際の3つのメリットをご紹介します。
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(1)離婚ができるかどうか、方法についてアドバイスを受けられる
愛着障害を理由に離婚をしようとする場合、離婚ができるのかどうか、離婚するためにはどのような方法がとれるのか、について判断できないという方がほとんどだと思います。
離婚問題に詳しい弁護士に相談すれば、以下のような疑問点を解消することができます。- 配偶者の愛着障害が離婚事由に該当するか
- 離婚事由を証明する証拠の集め方
- 相手からの離婚条件が適切なものかどうか
事案によって裁判離婚が難しいという場合には、協議離婚・調停離婚による解決を目指すことが有効なケースもあります。実績のある弁護士に相談すれば、そのような方針についても助言がもらえるでしょう。
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(2)相手方配偶者との連絡・交渉を任せられる
弁護士に依頼することで、相手との話し合いや交渉も任せることができます。弁護士は、依頼者の利益が最大化するように行動するため、個人で離婚条件をまとめるより有利になる可能性が高いといえるでしょう。
また、当事者同士でやり取りをする必要がなくなるため、精神的な負担も軽減されます。相手の不当な要求に対しても法的な根拠に基づき拒否してもらうことができます。 -
(3)面倒な裁判手続きもすべて一任できる
話し合いや離婚調停によっても相手が離婚に応じない場合には、裁判離婚をする必要があります。
裁判手続きは、原告と被告双方が、証拠に基づき主張を尽くした段階で、離婚を認めるかどうかを裁判官が判断します。離婚事件に詳しい弁護士に依頼することで、必要書類の作成・提出、相手への反論、裁判期日への出廷など面倒な裁判手続きについて、すべて任せることができます。
5、まとめ
以上この記事では、愛着障害の概要や、愛着障害を理由とする離婚の可否、方法などについて解説しました。
愛着障害が原因でパートナーとの離婚を検討している場合には、離婚トラブルの解決実績がある弁護士に早めに相談することをおすすめします。離婚紛争が大きくなる前の段階で弁護士に相談することで、スムーズに離婚できる可能性が高まります。
ベリーベスト法律事務所 練馬オフィスには、離婚トラブルの解決実績がある弁護士が在籍しております。おひとりで悩まず、まずはお気軽にご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています