養育費をもらえないケースはある? 対処法や弁護士相談のメリット
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練馬区における離婚件数は、令和2年は1049件、令和3年は1005件、令和4年度は949件と1000件前後という高い水準で推移しており、また東京都の市区町村の中でも、第5位という多さになっています。
子どもがいる夫婦の離婚では、離婚前に養育費の取り決めをすることが重要ですが、離婚後に養育費がもらえないケースも少なくありません。
このコラムでは、養育費がもらえないケースや養育費がもらえない場合の対処法などについて、ベリーベスト法律事務所 練馬区オフィスの弁護士が解説していきます。
1、養育費の支払いは義務
養育費の支払いは親の義務であり、民法には、「直系血族は互いに扶養する義務がある」(民法第877条1項)と規定されています。
そもそも養育費とは、子どもの監護・教育のために必要となる費用で、親権を持たない非監護親が監護親に対し支払う金銭のことをいいます。
一般的には18歳~22歳までの子どもが経済的・社会的に自立するまで必要となる生活費や教育費、医療費が養育費に含まれます。
養育費は月額で支払う方法が通常です。また、親の子どもに対する扶養義務の程度については、親と「同程度の生活」を保障する義務(生活保持義務)とされています。ただし、養育費の具体的な金額については、父母が話し合いで自由に決定することができます。
実務上では、家庭裁判所が公表している「養育費算定表」を基に、子どもの年齢・人数、両親の収入から家庭の状況にマッチする養育費等を算出できるようになっています。
2、養育費がもらえないケースはある?
親権者が養育費を受け取れないのはどのような場合なのでしょうか。よくある「養育費をもらえないケース」をご紹介します。
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(1)養育費の取り決めをしていなかった
養育費の取り決めをせずに離婚した場合は、支払いを受けることができません。
養育費は、離婚したら当然に発生するものではありません。親権をどちらが持つかを決める際、併せて話し合うことが一般的です。子どもの生活費や教育費、医療費がどのくらいの金額か、双方どの程度負担するか、支払方法、支払いの開始期間などを決め、離婚合意書や公正証書を作成します。
したがって、養育費について何も取り決めをしないまま離婚してしまうと、相手から養育費を受け取ることはできません。
離婚後に養育費を請求するためには、交渉で支払ってくれないのであれば、家庭裁判所に「養育費請求調停」を申し立てる必要があります。 -
(2)相手に支払い能力がない
相手に養育費を支払う経済的な能力がない場合も養育費を受け取ることができません。支払う側が無職で収入がない場合、養育費の金額は0~1万円程度になってしまいます。
ただし、夫に潜在的稼働能力(働こうと思えば働くことが可能である能力のことをいいます。)がある場合には、潜在的稼働能力に応じた収入があると見なされることがあります。
そのため、養育費の支払いを免れるために意図的に会社を退職したような場合や、一時的に失業状態であっても転職して働くことができる場合には、潜在的稼働能力ありとして、養育費の支払い請求ができる可能性があります。 -
(3)再婚して再婚相手の子ども(連れ子)と相手が養子縁組となった
再婚して相手が再婚相手の子どもと養子縁組を行った場合には、養育費が減額もしくは受け取れなくなる可能性があります。
再婚相手の子どもが相手と養子縁組をした場合、法律上の親子関係ができ、子どもに対する第一次的な扶養義務を負うのは相手となります。
そのため、相手に、子どもを養育するだけの十分な収入がない場合には、非監護親の養育費支払義務が減額・免除される可能性があるのです。
ただし、相手に、子どもを養育するための十分な収入がある場合には、引き続き養育費を支払わなければなりません。 -
(4)養育費を請求する側の収入が高い
親権者となって子どもを監護・養育している側の親(監護親、権利者)の収入が、非監護親(義務者)の収入よりも高い場合には、権利者の収入を義務者の収入と同額として養育費を算定しています。
通常は、義務者の収入が多いことから、生活水準の高い相手である義務者から養育費を請求できることが一般的です。しかし、権利者の収入の方が高い場合には、権利者の収入が高くなればなるほど養育費の負担が増え、義務者の負担が重くなりすぎるため、算定表では権利者と義務者の収入を義務者と同額とするという修正をしているのです。
ただし、義務者が本来ならもっと稼げるのに、あえて低い収入に甘んじている場合や、意図的に収入を低く抑えている場合などには、潜在的な稼働能力に応じた収入を認定して相当額が認められる可能性もあります。
お問い合わせください。
3、養育費をもらえないときの対処法
養育費をもらえない場合にはどうすればいいのでしょうか。ここでは養育費を受け取るための対処法について解説していきます。
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(1)元配偶者に連絡する
まずは、元配偶者に直接連絡して養育費の支払いを請求する必要があります。
相手が素直に要求に応じる場合には、養育費をもらうことができますが、相手の経済状況が悪い場合などには、調整が必要となる可能性もあります。
電話やメールなどでのやり取りでは、相手が支払おうとしない場合には、内容証明郵便を用いて請求していくことになります。内容証明を送ることで相手に対して心理的なプレッシャーをかけることができ、また、事後的な裁判手続で重要な証拠として提出することができます。 -
(2)調停の申し立て
養育費の支払いについて話し合いでまとまらない場合には、監護親から非監護親に対して、家庭裁判所に調停・審判を申し立て、養育費の支払いを求めていくことになります。
調停手続は裁判官1名と、その分野について専門的な知見のある人の中から選ばれた調停委員2人以上で構成される調停委員会が両親双方の言い分を聞き、専門的な立場からのアドバイスやあっせんを行います。
調停手続の中で夫婦の間で合意が成立すると、合意した内容が書面に残され手続きは終了します。 -
(3)履行勧告や強制執行
家庭裁判所の手続きで離婚が成立し養育費の支払いについて「調停調書」などが作成された場合には、「履行勧告」や「履行命令」の制度を利用できます。
調停などで養育費の支払いが決められていた場合には裁判所に申し立てることで債務者に対して履行勧告・履行命令を裁判所が発令してくれます。
相手方が正当な理由なく履行命令に従わない場合には過料という刑事罰の対象となるため心理的に履行を強制する間接的な効果があります。
また、「強制執行」を利用することで養育費を支払わない親から強制的に支払いを実現することができます。
養育費支払請求権に基づく強制執行として一般的に行われるのが、債務者の「給与の差押え」です。相手方親の給与債権を差押えることで毎月相手方の会社から直接金銭の支払いを受けられるようになります。
なお、注意点として養育費には消滅時効があります。養育費は、行使できることを知った時から5年で時効により消滅してしまいますので、注意が必要です(民法166条1項1号)。
4、養育費に関するトラブルは弁護士に相談を
それでは、養育費に関するトラブルは弁護士に相談すべきなのでしょうか。ここでは、弁護士に依頼した場合の3つのメリットを解説します。
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(1)代わりに交渉してくれる
弁護士に依頼すれば、親権者に代わって相手方と養育費の交渉を任せることができます。さまざまな理由から、離婚相手とはできるだけ関わりたくないという方も少なくないでしょう。
弁護士に依頼することで、すべての手続きを一任しておくことができます。 -
(2)法的な観点からアドバイスを受けられる
弁護士に相談することで養育費に関して適切なアドバイスを受けることができます。
相手が経済的に困窮している場合には、多少の減額に応じても養育費の支払いを合意した方がメリットとなる場合もあります。また、養育費の合意については公正証書を作成しておけば、相手が支払いを怠った場合にすぐに強制執行できる場合もあります。
このように弁護士に相談しておけば、あなたのケースで最適な選択肢をとれるように適切なアドバイスを受けることができます。 -
(3)精神的負担を軽減できる
親権者の方は、仕事に家事に育児と大変な中で、養育費の支払い請求をしていかなければなりません。
そこで、弁護士に依頼しておくことで、精神的・手続き的な負担を軽減できるという点は大きなメリットとなります。
弁護士に、相手方との交渉や、養育費支払調停・審判などの裁判手続などについて任せることで、新しい生活の準備や、日常生活に集中することができるでしょう。
5、まとめ
以上、養育費がもらえないケースと、養育費がもらえない場合の対処法などについて解説してきました。
監護者の方で養育費の支払いを受けられずに困っている場合には、最適な解決策を得るためにも、養育費トラブルの実績がある弁護士にご相談ください。
ベリーベスト法律事務所 練馬オフィスには、養育費をはじめとした離婚問題の実績がある豊富な弁護士が在籍しております。まずは、お気軽にご相談ください。
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