再生計画とは? 計画の立て方や認可を下りやすくするためのコツ

2023年08月01日
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再生計画とは? 計画の立て方や認可を下りやすくするためのコツ

2021年度に東京都練馬区へ寄せられた法律相談は2670件でした。

個人再生は、多額に及ぶ借金を減額できる可能性がある債務整理手続きです。個人再生手続きでは、債務者は再生計画案を作成して、裁判所に提出する必要があります。再生計画案は債権者によって可決される必要があるため、債権者の立場に配慮して作成することが必要になります。

本コラムでは、個人再生における「再生計画」について、作成方法や注意点などをベリーベスト法律事務所 練馬オフィスの弁護士が解説します。

1、個人再生手続きにおける「再生計画」とは?

個人再生は、原則として債権者全員との間で、債権カットや返済スケジュールの変更などを取り決める債務整理手続きです
借金が返済できず支払不能に陥るおそれがある方は、裁判所に対して個人再生手続の開始を申し立てることができます(民事再生法第21条第1項)。

個人再生手続きでは、債務者が裁判所の定める期間内に、「再生計画案」を作成して裁判所に提出する必要があります(同法第163条第1項)。
また、再生債権を裁判所に届け出た債権者も、再生計画案を提出することができます(同条第2項)。

  1. (1)再生計画=債権カットや返済スケジュールなどを定めた計画

    再生計画とは、民事再生手続(個人再生を含む)が開始された債務者について、債権カットや返済スケジュールなどを定めた計画です

    後述するように、債権者による決議と裁判所の認可がなされて、一定期間が経過すると再生計画が確定します。
    その後、債務者は再生計画に従い、減額後の債務を債権者に対して弁済します。

  2. (2)再生計画が確定するまでの手続き

    個人再生手続きにおける再生計画は、以下の手続きを経て確定します。

    1. ① 再生計画案の提出
      債務者が裁判所に対して再生計画案を提出します。債権者が対抗して再生計画案を提出することも可能です。

    2. ② 再生計画案を決議に付する旨の決定
      再生計画案の提出を受けた裁判所は、一定の事由に該当する場合を除いて、当該再生計画案を決議に付する旨の決定を行います(民事再生法第169条第1項)。
      ただし、個人再生の場合は、届け出があった再生債権に対して異議を述べることができる期間(=一般異議申述期間)が経過し、かつ債務者によって以下の事項を記載した報告書が裁判所に提出されなければ、再生計画案を決議に付することができないとされています(同法第230条第1項)。
    • 再生手続開始に至った事情
    • 債務者の業務および財産に関する経過および現状
    • その他、再生手続に関して必要な事項

    1. ③ 債権者による再生計画案の書面決議
      裁判所により決議に付する旨の決定がなされた再生計画案について、債権者による書面決議が行われます。
      債権者の不同意回答が議決権者総数の半数に満たず、かつ議決権総額の2分の1を超えない場合は、再生計画案が可決されたものとみなされます(同法第230条第6項)。

    2. ④ 裁判所による再生計画の認可
      裁判所は、以下のいずれかに該当する場合を除いて、再生計画認可の決定を行います(同法第231条第1項、第2項)。
    • 再生手続または再生計画が法律の規定に反し、かつその不備を補正できないとき(軽微な法律違反の場合を除く)
    • 再生計画が遂行される見込みがないとき
    • 再生計画の決議が不正の方法によって成立したとき
    • 再生計画の決議が再生債権者一般の利益に反するとき(=清算価値保障原則)
    • 債務者が将来において継続的に、または反復して収入を得る見込みがないとき
    • 無異議債権の額及び評価済債権の額の総額(住宅資金貸付債権の額、別除権の行使によって弁済を受けることができると見込まれる再生債権の額などを除く)が5000万円を超えているとき
    • 再生計画に基づく弁済額が、最低弁済額を下回っているとき(後述)
    ※住宅資金特別条項を定める場合等には、別途不認可事由あり(同法第202条第2項、第231条第2項第5号)

    1. ⑤ 即時抗告期間・再生計画の確定
      再生計画の認可または不認可の決定に対しては、即時抗告が認められています(同法第175条第1項)。
      即時抗告期間は、当該決定が官報公告された日の翌日から2週間以内です(同法第9条)。即時抗告期間が経過すると、再生計画が確定します。


2、再生計画案の作成方法

以下では、再生計画案の作成方法について、記載事項を中心に解説します。
とくに最低弁済額の計算については、誤りがないように注意深く確認することが大切です

  1. (1)再生計画案の記載事項

    再生計画案には、以下の事項を記載する必要があります(民事訴訟法第154条第1項)。

    1. ① 全部または一部の再生債権者の権利の変更
      再生債権(通常の債権)について、減額の方法や変更後の返済期日などを定めます。権利変更の一般的基準についても定めなければいけません(同法第156条)。

    2. ② 共益債権および一般優先債権の弁済
      共益債権や一般優先債権(優先権のある債権)の弁済内容を定めます。

    3. ③ 知れている開始後債権があるときは、その内容
      開始後債権(再生債権に劣後して弁済する債権)のうち、債務者が把握しているものの内容を定めます。


    さらに再生計画案には、以下の事項を定めることもできます。

    (a)債務者以外の者による債務引受・保証・担保提供など(同法第158条第1項、第2項)
    (b)未確定の再生債権の取り扱い(同法第159条)
    (c)別除権者の権利に関する事項(同法第160条第1項)


  2. (2)最低弁済額の計算方法

    再生債権者の権利の変更を定める際には、再生計画に基づく弁済額を最低弁済額以上とする必要があります

    具体的には、以下の①および②をいずれも満たす形で、各債権者に対する弁済額を定めなければいけません。

    1. ① 債務総額に応じた最低弁済額(民事再生法第231条第2項第2号~第4号)
      減額前の債務総額が
    • 100万円未満:全額
    • 100万円以上500万円未満の場合:100万円
    • 500万円以上1500万円未満の場合:減額前の5分の1
    • 1500万円以上3000万円以下:300万円
    • 3000万円を超え5000万円以下の場合:減額前の10分の1
    ※減額前の債務総額が5000万円を超える場合、個人再生の利用は不可

    1. ② 清算価値保障原則に基づく最低弁済額
      各債権者について、破産手続きが行われた場合に見込まれる配当額


3、可決されやすい再生計画案のポイント

個人再生を成功させるためにもっとも重要となるのが、債権者による再生計画案の書面決議です。

債権者によって再生計画案が可決される可能性を高めるには、以下の各点を意識して再生計画案を作成する必要があります

  1. ① 最低弁済額よりも高い弁済額を設定する
  2. ② 返済期間は原則として3年間とする
  3. ③ 債権者との間で個別に調整する


  1. (1)最低弁済額よりも高い弁済額を設定する

    再生計画案において定めるべき弁済額について、民事再生法上の最低ラインは、前述の二つの最低弁済額となります。

    とはいえ、当然ながら、弁済額は高めの金額としたほうが債権者によって再生計画案が可決される可能性は高まります
    債務者の収入見込みなどを考慮したうえで、債権者に配慮してある程度高めの弁済額を設定したほうがいいでしょう。

  2. (2)返済期間は原則として3年間とする

    再生計画案においては、原則として返済期間を3年間としなければなりません(民事再生法第229条第2項第2号)

    特別の事情がある場合には最長5年間の計画弁済が認められますが、その理由説明が必要になりますし、スムーズに再生計画を確定させるため、返済期間は原則として3年とすることが望ましいといえます。

  3. (3)債権者との間で個別に調整する

    再生計画案の内容について、債権者との間で個別に調整や交渉を行うことも有力な方法です。

    債権者の要望をヒアリングしつつ、適宜それを再生計画案に反映させれば、再生計画案が可決される可能性が高まります。
    大口の債権者については、再生計画案に対する賛成を得られるように、可能な限りその意向や利益に配慮するようにしてください

4、個人再生の申し立ては弁護士に相談を

個人再生を申し立てる際には、最低弁済額の計算などさまざまな検討を行ったうえで、適切な内容の再生計画案を作成する必要があります。
そのほかにも個人再生に特有の手続きや注意点が存在するため、債務者ご自身だけで対応するのは非常に大変です。

弁護士は、個人再生の申し立てに必要な準備や、実際の期日における対応などを一括して代行することができます
また、再生計画案についても、債務者の経済状況や債権者の意向などを総合的に考慮して、スムーズに可決・認可されるような内容に仕上げることが可能です。

個人再生によって借金などの債務を減額したい方は、お早めに弁護士までご相談ください。

5、まとめ

個人再生手続きを通じて債務の減額などを目指す場合は、裁判所に再生計画案を提出しなければなりません。
再生計画案を作成する際には、民事再生法の規定に基づく事項を定めるほか、最低弁済額などに注意が必要になります。
さらに、債権者に再生計画案を可決してもらうため、状況に応じて債権者との調整や交渉なども行っていきましょう。
個人再生の申し立てに当たっては専門的な対応が必要となるため、弁護士に依頼することをおすすめします。

ベリーベスト法律事務所では、個人再生を含む債務整理のご相談を随時受け付けております。
ご状況に応じて適切な債務整理の方法を提案するほか、実際の手続きについても弁護士が全面的に代行いたします。
借金など債務の支払いが困難となり、債務整理によって再起を図りたいとお考えの方は、まずはベリーベスト法律事務所にご連絡ください

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