遺留分侵害額請求における相手方と、請求方法を解説

2024年02月29日
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遺留分侵害額請求における相手方と、請求方法を解説

被相続人が遺言書を作成していた場合には、遺言書の内容に従って遺産を分けることになります。

しかし、遺言書の内容が特定の相続人のみを有利に扱う内容であった場合には、その他の相続人としては不満を抱くこともあるでしょう。相続人には「遺留分」が保障されていますので、遺言により遺留分を侵害された相続人は、遺留分侵害額請求により、侵害された遺留分相当額を取り戻すことが可能です。

本コラムでは、遺留分侵害額請求における相手方が誰になるのか、また具体的な請求方法などについて、ベリーベスト法律事務所 練馬オフィスの弁護士が解説します。

1、遺留分侵害額請求とは

遺留分侵害額請求とは、不平等な遺言や贈与により遺留分を侵害された相続人が遺留分の取り戻しを行うための請求です

相続人には、法律上、「遺留分」として、最低限度の遺産の取得割合が保障されています。
被相続人が特定の相続人にすべての遺産を相続させる旨の遺言を残すことも有効とされていますが、そのような遺言では、他の相続人の遺留分が侵害されることになります。
このように遺留分を侵害された相続人は、侵害された遺留分に相当する金銭を取り戻すために、遺留分侵害額請求を行うことが可能です。
なお、遺留分が認められているのは、兄弟姉妹以外の法定相続人となります。

2、遺留分侵害額請求の相手方は誰になるのか

以下では、遺留分を侵害された相続人が遺留分侵害額請求権を行使できる相手方が誰になるかについて、具体的に解説します。

  1. (1)遺留分侵害額請求の相手方は「受遺者」・「受贈者」

    遺留分侵害額請求は、遺贈や生前贈与によって侵害された遺留分を取り戻すための手続きです。
    そのため、遺留分侵害額請求の相手方は、遺贈を受けた「受遺者」および生前贈与を受けた「受贈者」ということになります

    遺留分を侵害された相続人は、受遺者および遺贈者が誰であるかを調べて、その人に対して遺留分侵害額請求を行います。
    受遺者が誰であるかは、遺言書を確認することで明らかになります。
    また、受贈者が誰であるかは、贈与契約書を確認することで明らかにできます。
    贈与契約書は必ず作成されるものではありませんが、金額の大きい贈与をするときには贈与税の課税の問題もあるため、贈与契約書を作成しているケースが多いといえます。

  2. (2)遺贈・生前贈与のパターン別の相手方

    遺留分侵害請求の相手方は、遺留分侵害者である受遺者・受贈者ですが、遺贈と生前贈与の両方がなされているケースや複数の受遺者・受贈者がいる場合には、誰に対して請求すればよいか迷うこともあります。

    以下では、遺贈・生前贈与のパターン別に、相手方を紹介します。

    ① 遺贈と生前贈与がある場合
    遺贈と生前贈与がある場合には、法律上、受遺者への請求が優先されます
    そのため、まずは受遺者に対して遺留分侵害額請求を行って、それでも足りない場合に受贈者への請求を行うことになるのです。

    この順番は法律上定められた強行規定であるため、被相続人の意思によって変更することはできません。

    ② 遺贈が複数の場合
    遺贈が複数ある場合には、原則として、すべての受遺者に対して、遺贈された財産の価格割合に応じて遺留分侵害額請求を行います

    ただし、遺言書で遺言者が特定の遺贈から先に遺留分侵害額請求を行うとの意思表示があった場合には、その意思を尊重して、遺言者が指定した順番で遺留分侵害額請求を行うことになります。

    ③ 生前贈与が複数の場合
    生前贈与が複数ある場合には、新しい贈与が優先されます

    そのため、まずは、日付の新しい受贈者に対して遺留分侵害額請求を行い、それでも足りない場合には次の受贈者に請求していくことになります。

    受贈者が複数いて、その贈与が同時にされたものであるときは、原則として、贈与された財産の価額割合に応じて遺留分侵害額請求を行うことになります。

3、遺留分侵害額請求の方法

以下では、遺留分侵害額請求は、以下のような方法で行使します。

  1. (1)相手方との話し合い

    遺贈や生前贈与により、遺留分の侵害があった場合には、まずは、遺留分権利者と遺留分侵害者との話し合いによる解決を図ることになります。

    遺留分権利者は、遺留分侵害額を計算して、遺留分侵害者に対して請求し、お互いの話し合いで支払金額や支払時期、支払い方法などを決めていきます。
    話し合いで合意にいたった場合には、後日にトラブルが生じるのを防ぐためにも、必ず合意書などの書面を作成して合意内容を明確化しておきましょう

  2. (2)内容証明郵便を送付

    遺留分侵害額請求権には、相続の開始および遺留分の侵害があったことを知ったときから1年という時効が定められています
    しかし、時効期間内に権利を行使することで、時効による権利の消滅を防ぐことができます。

    話し合いによる解決が難しい場合や、話し合いが長期化しているという場合には、内容証明郵便を利用して、遺留分侵害額請求権の行使をした証拠を残しておきましょう。

  3. (3)遺留分侵害額の請求調停

    当事者同士の話し合いでは遺留分に関する問題が解決できない場合には、家庭裁判所に遺留分侵害額の請求調停の申立てを行います。
    遺留分に関する争いについては「調停前置主義」が採用されているために、話し合いで解決できないとしても、原則として、いきなり訴訟を提起することはできず、まずは調停の手続きを経ことになります。

    調停では、調停委員が当事者の間に入ってトラブル解決に向けた調整を行ってくれますので、当事者同士で話し合うよりもスムーズな解決が期待できます。
    当事者双方が解決方法に合意できれば、その時点で、調停成立となります。

  4. (4)遺留分侵害額請求訴訟

    調停はあくまでも話し合いの手続きであるため、相手方が遺留分の支払いに応じない態度をとりつづける場合には、調停は不成立となる可能性が高いでしょう。
    そのような場合には、裁判所に遺留分侵害額請求訴訟を提起する必要があります。

    訴訟では、証拠に基づき遺留分の侵害があったという事実や具体的な侵害額について、積極的に主張や立証を行う必要があります。
    調停に比べて複雑な手続きとなるので、訴訟になった際には弁護士に依頼することが一般的です

4、遺留分侵害額請求は弁護士にご相談を

遺留分侵害額請求を検討されている方は、まずは弁護士に相談してください。

  1. (1)遺留分侵害額を正確に計算できる

    遺留分侵害額請求をするためには、遺留分権利者の側で侵害された遺留分の金額を計算する必要があります。
    そのような計算をするためには、被相続人の相続財産がいくらなのか、どのような贈与があったのかなどを具体的に明らかにしなければなりません。

    遺留分侵害額の計算方法は非常に複雑であるため、法律に専門知識を持たない方にとっては、正確な金額を算定するのは困難でしょう。

    計算に誤りがあると本来もらえるべき金額よりも少ない遺留分になってしまうおそれもあるため、遺留分の計算は、専門家である弁護士に任せることをおすすめします

  2. (2)遺留分侵害額請求の手間やストレスを軽減できる

    遺留分侵害額請求をする際には、まずは遺留分侵害者との話し合いによる解決を図るのが基本となります。
    相手が素直に応じてくれればよいですが、そうでない場合には、相手の主張に対して反論するという手間が生じます。
    また、多くの方にとっては、交渉をすること自体が精神的にストレスとなるでしょう。

    弁護士には相手方との交渉の代行を依頼することができるため、ご自身の手間やストレスは大幅に軽減します。
    また、相手が理不尽な要求をしてきたとしても、法律の専門知識に基づいてこちらの主張の正当性を伝えることができるため、交渉によって解決する可能性を上げられます
    もし相手が話し合いに応じなかったとしても、弁護士であれば調停や訴訟手続きにより遺留分の問題を解決することができるため、まずは弁護士にご相談ください。

  3. (3)時効により権利が消滅することを防げる

    遺留分侵害額請求権には、1年という非常に短い時効期間が設定されています。
    相続開始および遺留分の侵害があったことを知ったときは、そのときから1年以内に権利を行使しなければ、大切な権利が失われてしまうことになるのです。

    1年という期間は、あっという間に過ぎてしまいます。
    知識や経験のない方では、何から手を付ければよいかわからず、時間だけが過ぎていってしまうおそれもあるでしょう。
    時効による権利の消滅を回避するためにも、まずは弁護士に依頼することをおすすめします

5、まとめ

遺贈や生前贈与により遺留分を侵害された相続人は、受遺者および受贈者に対して、遺留分侵害額請求権を行使することができます。
受遺者および受贈者への遺留分侵害額請求権の行使にあたっては、実際の状況に応じて権利行使の順番や金額が異なってくるため、適切に権利を行使するためにも、まずは弁護士に相談することをおすすめします。

遺留分侵害額請求権の行使を検討されている方や、その他にも相続に関してお悩みやお困りごとがある方は、まずはベリーベスト法律事務所まで、お気軽にご連絡ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています